ねえ、ほんとは分かってるんだよね。


とてもお医者さんらしくないけれど、じつは誠実で優秀なあの人は、ありのままの事実を告げたはずだから。


そして私も分かってるんだ。


「これから」とか、「また」とか、そういう言葉が遠くへ行ってしまったことを。




だけど、ママの気持ちをくじくようなことはしたくなかった。


「うん、そうだね。

また……がんばれば、いいんだよね」


私も、そう願いたかった。


笑おうとして細めた視界に、部屋の扉の前で立ち尽くしているパパの姿が映った。


パパは、私が見たこともないくらい疲れた表情で、うさぎみたいに真っ赤な目をしていた。