「でも、ほんとに……こんなに痩せちゃって……」


静まり返った部屋に、ママの涙声が落ちた。


このかさついた頬をなぞるやわらかい手が、震えている。




いまや私の体は、圭吾さんと出会う以前よりも痩せていた。


冬であるのをいいことに厚着をしていたけれど、ごまかしきれていないのは分かっていた。


それでも、どんなに体がつらくても、私はここにいたかった。


体質を言い訳にして、いろんなことから逃げてきた自分の弱さに打ち勝ちたかった。




でも、力の入らない手足と、ここにいるみんなの表情が物語っている。


もう、タイムリミット。




「……おじさま……ごめんなさい」


よくしていただいたのに、最後まで迷惑をかけてしまって。


気力を振りしぼって謝ると、おじさまは、はっと顔を上げて私の元へ歩み寄り、この手を握った。


「何も気に病むことはありません。

ここには、いつだってあなたの場所が確保されているんです。

またここへ戻ってくるんですよ」


感謝と悔しさがないまぜになって、目頭が熱くなった。


今痛んでいるのが体なのか、心なのか、よく分からない。


もしかしたら、両方なのかもしれない。




それから私は川崎先生の車に乗せられ、研究所を去った。


もうろうとする記憶の最後に刻まれたのは、冬休みも終わり閑散とした施設と、きたときと同じ突き抜ける空だった。