部屋には、バックサウンドだけになった曲が延々とリピートされている。
もう何度目になるだろう。
私は、プレーヤーの前にうずくまったまま、停止ボタンを押すことができない。
圭吾さんの声だった。
どんなにプロ仕様の音楽になっていようと、圭吾さんの歌は彼そのものだった。
七色の声も、音楽へのひたむきさも。
何一つ、変わっていなかった。
涙が止まらない。
食い尽くされて空になった曲から、ぬくもりの余韻を探すことを諦められない。
発表前の大切な音源を、こんなふうに外にもらすなんて。
仲間だった綾乃にさえ、心を痛めながらも決して厳しさをゆるめなかったくせに。
もう、プロのくせに。
私のために、こんな。……
泣きながら笑う、なんて器用なことができたのは、これが生まれて初めてだったと思う。
圭吾さんの気持ちが、嬉しかった。
そして、体を引き裂かれそうなほどに、切なくなった。
恋しくて、たまらない。
今の私の中には、純粋な一つの想いだけがあった。
「圭吾さんが、好き……」