それから私が目を覚ましたのは、夜更けになってからのことだった。
いくらか体は楽になっていて、意識もはっきりしている。
どうやら峠は越えたようだ。
ひどい息苦しさから解放されたことに安堵のため息をついて上体を起こすと、枕元の茶封筒が目に入った。
そういえば、ママが送ってくれてたんだっけ。
すっかり忘れていた。
この部屋はとても狭くて、手を伸ばせばだいたいの物に届く。
私は引き寄せたバッグに入っていたぺンケースからハサミを取り出し、封を切った。
出てきたのは、一回り小さな未開封の茶封筒と、一枚の便せん。
不思議に思った私は、まず便せんを開くと、それはママからの手紙だった。
私の体調を気遣ったり、こちらでの生活をうかがったり。
ママらしい文章が並ぶ中、最後にこう記されていた。
『この手紙を書こうと思ったのは、今朝沙妃ちゃんにお届け物があったからです。
とても大切な物かもしれないから、ママ、預かっておく自信がなくって、思い切って送ってみました。
大丈夫よ、中は見てないから。』
ひやかしを含んだ言い回しに、ある予感が芽生えて、緊張が走る。
まさか、そんなはずない。
必死に否定するけれど、今更なのは分かっているけれど。
震える手で、おそるおそる、お届け物の差出人を確認すると。
「うそ……」
あんなにも焦がれていた、ひどく懐かしい文字の並びに、時間が止まった。