正午をすぎた頃、おじさまが部屋を訪れてくれた。
「沙妃さん、お加減はいかがですか?」
意識がもうろうとしている私は、ため息のような声をしぼり出すので精一杯。
「随分つらそうですね。
解熱剤を使えればいいんですが……いや、こんなことを言っていても仕方がありませんね。
これは、気休めかもしれませんが」
そう言っておじさまは、私のおでこに冷却シートを貼ってくれた。
冷たさが乱暴に思えたのも一瞬のことで、熱を持ち過ぎた皮膚にとってそれはすぐに心地よいものになった。
「ああ、喋らなくていいんですよ。
沙妃さんの性格はよく分かってますから、お礼の言葉はちゃんと受け取りましたよ」
今日のおじさまは、いつもより多弁。
きっと外に出られない私に食事を提供してくれているのだろう。
とても、とても、優しいおじさま。
「そうそう、今朝、未耶子さんから封書が届いたんです」
始めから用意していた話題を、さもたった今思い出したかのようにして、おじさまは携えていた袋の中を探り出した。
「一通は僕宛てで、他愛のない嬉しい手紙でした。
もう一通は沙妃さん宛てになっていたので、持ってきましたよ。
ここに置いておきますね」
枕元にそっと置かれたのは、手紙にしては大きすぎるB5サイズの茶封筒。
中が気になるけれど、今はまだ好奇心よりも体に絡みつくだるさのほうが勝って動けない。
「急ぎの用ではないようですし、中を確認するのは体が楽になってからでもいいでしょう。
今はゆっくり休んで、元気になったらまた一緒に頑張りましょうね」
意図しておしゃべりになっていたおじさまが去り、静けさを取り戻した部屋で、私は重い瞼に抗うことなく目を閉じた。