そして、目まぐるしく十日ほど駆け抜けた頃。
ここへきて初めて、雨が降ってしまった。
厚い雨雲にさえぎられては、星が見えない。
私は雨が止み雲が開けるのを信じて望遠鏡の前にうずくまっていた。
観測結果や資料から得た知識をまとめるためのノートは、すでに五冊目に入っている。
驚異的な速さで、私はいろんなことを吸収している。
でも、満たされない。
どんなに頑張っても、まだまだ足りない。
足りないから、もっと頑張らなきゃいけないのに、なぜ雨なんか降るの?
もっと、もっと、頑張らせて。
そしてこの隙間を埋めさせて。……
「頑張りすぎではないですか?」
不意に聞こえた声に振り向くと、そこにはおじさまの姿があった。
もう時計の針は日付を越えて、明日の時を刻み始めているというのに。
「まだ、いらっしゃったんですか」
「それは僕のセリフですよ、沙妃さん」
おじさまは「失礼しますよ」と私の隣に腰を下ろした。
闇を透かしている小宇宙のようなドームの天井を、二人で見上げる。
雨の叩きつける音が止む気配はない。