その夜、私はこっそりと下宿を抜け出した。
ダルマになるほど着こみ、大きな荷物をたずさえて。
挨拶回りをしている最中、敷地のはずれにある小高い丘に、私は目をつけていた。
建物から少し離れていて、外灯もなく、きっと星の光が際立つだろうと目論んだのだ。
案の定、そこは絶好の天体観測スポットだった。
私はビニールシートを広げると、その上に寝転がり、湯たんぽを抱っこして毛布にくるまった。
呼吸する度にもくもくと湧き出す白い息。
さらされている頬や鼻の頭が冷えを通り越してしびれ、感覚がない。
そんな厳しい寒さの中、目の前には一面の宝石の世界が広がっていた。
生まれ育った街では決して見ることのできなかった、満天の星空だ。
小さな頃から憧れていた。
時に魅了し、時に慰め、時に励ましてくれる存在。
好きで好きで、片時も脳裏から離れずにいたそれが、これ以上ない美しさで私を見下ろしている。
なのに。
それなのに。
私の心は、なぜ今ここにいないのだろう。……