部屋へ荷物を運びこんだあと、おじさまから聞かされたここでの私の生活は、次のような内容だった。




私は、あくまで研究所で働く人々のサポートという立場。


午前中は研究所の掃除、午後は施設の受付などの手伝い……いわゆる雑用係だ。


「さすがに研究者達と同じことをさせてあげるわけにはいきませんのでね。

でも、これも星に関わる大切な仕事の一つです。

有意義な経験になるはずですよ。

ただ、それだけでは物足りないでしょう?

夜は、小さめですが性能のいい天体望遠鏡を自由に使えるよう手配してあります。

存分に星と触れ合ってくださいね」


これは、またとない好条件。


私一人の力じゃ得られなかった環境だ。




それから紹介された研究所の人達からも、口々に言われた。


「君が横山教授の姪っ子さんか。

こんなに立派な方とつながりがあるなんて、幸運だね。

うらやましい限りだよ」


この研究所は、天文学や宇宙開発の分野で名声をとどろかせている、とある大学の所有するもので、数人の教授が各々チームを率いて日夜励んでいるらしい。


チームの構成員は、その大学に属している大学院生や助教授。


修士号以上の肩書を持っている、第一線の人達だ。


突然やってきた素人の私は場違いだと邪険にされるのではないか、と嫌な想像をしていたけれど、それは間違いだった。


とても親切で、優しい人ばかり。


それは、研究所内に数ある組織の中で、特別に規模の小さいおじさまのチームの特色であるらしい。


「僕のわがままにつき合ってくれるくらい、忍耐強くて奇特な人達ですから。

突然海外に行って何年も帰らないような上司を待っていてくれるような、ね」


見れば、苦笑いしている研究員の人達。


もしかしたらおじさまは私の知らない顔をたくさん隠しているのかもしれない。