現実味は、あまりなかった。


自分の体に起こっている異常を、どこかで察知はしていたし、良くない自体に陥っていることを頭では理解していた。


でも、気持ちがついていかない。


心は冷めていて、ただ、これからしなければならないことが洪水のように思い浮かぶばかり。


そう、私には、これから、がたくさんあるのだ。




「お願いします、パパとママには知らせないで」


とっさに私は頭を下げていた。


まばたきも忘れて、白い床を見つめながら、しかしこの目には何も映っていなかったと思う。




「お願いします」




「お願いします」




「お願い、しま……」




「もういい!」


破裂したような声に弾かれて顔を上げた。


川崎先生は、左手を机にすがるように預け、右手で顔を覆っていた。




「もう、いいから……」




握り潰した苦悩からしたたり落ちたような、痛みに満ちた声だった。