タンタン、タンタン……




不穏な空気に耐え切れず、いまだ続けられている軽口をさえぎって、私は尋ねた。


「悪いんですか?」


靴の音が、止んだ。


私は川崎先生の顔を凝視する。


その目が考えあぐねるようにわずかにさまよい、それでも口元は無理に笑みを作ろうとしていたから、私は答えを待たずに言葉をかぶせた。


「悪いんでしょう?」


この声に焦燥がにじんだのは、本当のことを知りたいと思っていたから。


希望を見出だそうとしても、ぬぐえない予感に恐怖する、その繰り返しに私は疲れていたらしい。


初めて異常を感じた、あのときから。




認めたくなんてない。


でも、聞きたくない答えが待っているのは、覚悟していた。




私の気迫に圧されて観念したらしく、川崎先生は表情を偽ることをやめて、ため息をついた。




「……今日ここにくるってことは、未耶子ちゃん達には言ってあるのか?」