「……どういう、ことですか?」
「まあ、簡単に言うならば、沙妃さんのために僕が便宜を図りましょう、ということです」
便宜。
なんだか、とても邪悪な響きがする。
私が身を固くすると、おじさまは「いやいや」と手を横に振って笑った。
「気にすることはありませんよ。
法に触れるようなことはしませんし、こういうのは結構ザラにある話ですから。
それに、沙妃さんご自身の頑張りがなければ、僕が手を回そうと回すまいと変わりません。
要は沙妃さん次第ってことです」
穏やかな中に、試すような光を持った瞳で見据えられる。
「沙妃さんが本気なら、どうでしょう。
年が明けてからひと月くらい、ちょっとした仕事をしてみませんか?」
とても、いい話だ。
断る理由なんかない。
それなのに、私は一瞬ためらってしまった。
星を見つけるって目標に近づけるなら、何にでも飛びこみたいと思う。
長い間募らせてきた思いに嘘はない。
でも、喉の奥に、つっかえているものがある。
今、私が本当に望んでいるのは。……
頭の中で明確な言葉が浮かぶ前に、私はそれを認めることを拒絶した。
「チャンスをいただけるなら、何でもします!」