あの、諦めと絶望の入り交じった蒼白の顔。
私は幼いながらに、事態が取り返しのつかないことを悟った。
そして、それが自分の犯した償いようのない罪だということも。
私は、パパの声を食べ尽くしてしまった。……
このとき初めて、私達は声に限りがあることを知った。
不可抗力ではあった。
前例のない特異体質が何をもたらすのかなんて、予想できるはずがなかったのだから。
でも、パパは、もう二度と話せない。……
それ以来、私はまともに食事ができなくなった。
声を口に含む度に、あのときのパパの表情がまぶたの裏によみがえる。
また誰かの声を奪ってしまうかと思うと、喉はふさがった。