「それと同じなんだよ。
私が圭吾さんの傍にいるってことは」
残酷なまでに冷淡に言い切ったのは、綾乃を怯えさせたかったからじゃない。
私が、私自身に言い聞かせていたんだ。
早く諦めなさい、って。
「だから、手遅れにならないうちに、離れることにしたんだ」
もう充分に涙は流した。
「でも、今はとてもすがすがしい気持ちなんだよ。
出会えてよかったって、心から思ってる。
圭吾さんのこと、これからも応援していく気持ちは変わらないし。
圭吾さんが頑張ってると思うと、私も頑張らなきゃ、って」
また大切な人を絶望に突き落とすことと比べたら。
これくらいのつらさは、耐えられる。
「自分を貫くこととか、たくさんのことも教わったから。
今までずっと逃げてたけど、これからは自分のやりたいことやろうって思うんだ」
これが最善の方法だったんだ。
「……勝手だよ」
黙りこんでいた綾乃が、うつむいたままつぶやいた。