「……いいわね」


「え?」


「可愛い。

うん、可愛いわ!」


「ええっ?」


「ちょっとびっくりしたけど、とっても似合ってる!

沙妃ちゃんの新しい魅力が花開いた感じよ!」


弾かれたように、ママが飛び切りの笑顔になった。


「とても綺麗な髪だったけど、前は顔が隠れてたものね。

沙妃ちゃんの可愛い顔がしっかり見えるから、今のほうがいいわ」




そう。


長い髪の毛は、周りから隠れるための盾でもあった。


でも、もう盾に頼ることなんて、しないんだ。




「だけど、どうして急に髪を切ろうなんて思ったの?」


「んー……気分転換かな。

動きづらかったし」


「沙妃ちゃんが動くこと前提で物事を判断するなんて、珍しい」


「私、もう大学生だよ。

弱虫のままじゃ、いられないもん」


「まあ、頼もしいわね」




今までたくさん頼ってきたから。


これからは、自分の足で歩けるようになりたい。




その決意の象徴として、私なりに考えた次のチャレンジ。


「それからね、ママ。

私、バイトしようと思ってるんだ」




また、ママの悲鳴がこだました。