「その髪どうしたの!?」
いつものように玄関まで出迎えてくれたママが、悲鳴を上げた。
無理もない。
私は、腰の下まであった長い髪を、ばっさりと切った。
美容師さん曰く、ボブという長さらしい。
圭吾さんにさよならを告げてから数日。
見かけは平静に振舞っていた自信があるけれど、心はなかなか言うこと聞いてくれなかった。
だから、気持ちを整理するために、苦手で何年も遠ざけていた美容院へ足を運んだのだ。
綾乃は、よく髪型を変える。
その度に、優しくなったり、大人っぽくなったり、仕草まで変わるように見える。
少しベタな気はするけれど、私は髪を切ることの力を信じていた。
実際、頭が軽くなって、心まで軽くなったような気がする。
受け入れられなかった圭吾さん以外の声を、今日は少しだけ食べることができた。
「似合う?」
私としては、なかなか気に入ったこの髪型。
でも、返事はない。
絶句って、こういうときに使うんだと思う。
ママは金魚みたいに口をぱくぱくさせている。
……失敗してしまったのだろうか。
「変、かな……」
苦笑いで尋ねると。