「言葉にしなかったのが、いけなかったってこと?」




圭吾さん、怒ってる。




「そんなもの必要ないくらい、通じ合えてると思ってたけど……

ごめん、俺の思い上がりだった」


ゆらりと上体を起こした彼に、思わず後ずさりする。


それを許すまいと、手首をつかまれた。




「放してくださ……」


「言葉にしてほしいならするよ。

そういうの苦手だけど、沙妃ちゃんが望むなら、そうする」


「違う、そんなことじゃ……」




「何、隠してる?」


透き通った瞳に射抜かれ、私は恐がるのも忘れて動けなくなった。


「沙妃ちゃん、ずっと俺に何か隠してるよな。

俺が言えたことじゃないけど……一体何に苦しんでるんだ?」




見透かさないで。




「何もない……」


「だったら、もう会わないなんて言うな。

今、俺の考えてることが、分からないなんてないはずだ」


食べなくても分かる。


今の彼の声は、きっとすごく苦い。




心が、痛い。


私は必死に唇を噛み締めて、首を横に振った。