私は膝の上に両手を置き、それを握ったり広げたりしながら、これが夢じゃないことを確かめる。


そうしていると、布団がもぞもぞ動いて、圭吾さんがこちらを向いた。


「……伝えたいことって、何?」


毛布を口元まで引き上げて、潤んだ目で私を見てる。


こんな子供みたいな表情、初めて。


胸が焼けるほど熱くなる。




その、丸くなってる大きな体も、赤い頬も、ぼさぼさの頭も、愛しくてしようがない。


散らかってる部屋を片づけてあげたい。


ここにあるすべてのレコードやCDのこと、教えてほしい。




でも、できない。


もう、しちゃいけない。




「圭吾さん」




私は、感情を押し殺して、できるだけどんな顔色も消して言った。




「会うのは、今日で最後にしたいんです」




圭吾さんは、黙って私を見上げた。