招き入れられた私は、そこがモノクロ調で殺風景なフローリングだと、勝手に想像していた。
ところが、実際は服が散乱し、CDやレコードが大量に積み上げられている、狭い和室だった。
「ごめん、汚くて……」
照れているのか、まだ熱が下がらないのか、圭吾さんの頬は少し赤い。
「私のほうこそ、突然押しかけてごめんなさい」
「気にすることないよ。
でも、どうして?」
「住所は、トワさんに教えてもらいました」
「いや、そうじゃなくて。
家にまで訪ねてきてくれるなんて……」
「それは……伝えたいことが、あって」
「伝えたいこと?」
だれてるシャツと乱れた後ろ髪が、今まで寝ていたことを物語っている。
うつろな目に、すぐれない体調が映し出されている。
「話はすぐ済みますから、無理しないで横になっててください」
よほど余裕がないのだろう、圭吾さんは素直に布団へともぐっていった。
こちらに向いている背中が、「その辺に座って」と促す。
私は、布団の脇に座った。
ここは、圭吾さんの匂いでいっぱいだ。
とても心地がいい。
これから私が彼に告げようとしていること、それによって私達に訪れるものが、まるで嘘みたいに思えてくる。