私と綾乃は、真っ向から対立していた。
「どうせ、また『私は圭吾さんの負担になるから』とか言うんでしょ?
どうして圭吾くんの気持ちが分からないの?
圭吾くんは、沙妃に会いたいんだよ!」
「でも、会ったら絶対食べたくなっちゃう……。
そしたら……」
「じゃあ、これから先ずっとそれに怯えて生きてくの?
どうにか良い方法を見つけようとか思わないの?」
「だって、どうにもならないじゃない……。
私は、食べなきゃ生きていけないんだよ」
「それはそれ、これはこれ。
圭吾くんと一緒にいることと、声を食べることは別に考えなよ」
そんなの無理だよ。
この世界で一番おいしい料理を常に差し出されている状態で、それを食べずに見ていろって言われてるのと同じことじゃない。
私は、ずっと我慢していられるほど、強い精神を持ち合わせてない。
綾乃だったら、我慢できるの?
でも、尋ねるのはやめた。
だって、知りようもないことを「知れ」と強要するなんて、不毛なんだもの。
そもそもこうなった原因は、私が『Sir.juke』のライブへ行くことを拒否したことだった。
この前会ったとき、圭吾さんは咳をした。
あれが兆候だとしたら、もうギリギリのところまできているはず。
恐くてライブになんか行けない。
うっかり口に入れただけで、もう致命的かもしれないのだから。