私につられたのか、今度は圭吾さんが多弁になった。


「綾乃のこと、言い訳はしないけど、傷つけたことは本意じゃなかったんだ。

それでも、傷つけた事実は変わらない。

沙妃ちゃんにも、嫌われて仕方ないと思ってた」




そんな笑顔を、私に向けないで。




「だけど、そんなふうに思ってたことは失礼だったのかな。

信じてくれてたみたい、だし」




そんな声で、語りかけないで。




「デビューしたら、今よりもっといろんなことがあると思う。

でも、俺も気持ちは変わらないから」




我慢できなくなってしまう。




「これからも、こんなふうに一緒にいてくれたら、嬉しい」




肩が震えた。


圭吾さんの未来に、私の居場所がある。


そう思うと、嬉しくて、愛しくて、切なくて、あふれる気持ちに自分をコントロールできない。




もう駄目だ。


少しだけ、お願い、少しだけでいいから。




「圭吾さん」


「なに?」




私は、ついにそれを口にしてしまった。