「……ラ、ライブ?」
「そう。小さなライブハウスなんだけどね。
私がサポートに入ってから初めてのライブが決まったの。
うちのボーカルは絶品なんだから!」
曇っていた綾乃の目が、輝き出した。
行ってみたい、と思う。
それは、絶品だというボーカルの声を食べたいからじゃなくて、ステージに立つ綾乃を一目見てみたいから。
でも、会場での人混みを想像すると、気持ちはあっという間にしおれる。
「せっかくだけど、……今回は遠慮しておく」
「そう?それは残念」
綾乃は肩を落としたけれど、それでも笑って言ってくれた。
「まあ、ライブまでにまだ時間はあるし、気が向いたら言ってね。
沙妃はもっと食べたほうがいいと思うの。
たくさん食べて、少し太ったほうが絶対もっと可愛くなるから」