大学の帰りに綾乃の家へ寄ることにした。
綾乃が心配だったのは言うまでもないけれど、本当は私が一人になりたくなかったのかもしれない。
綾乃の家はデザイナーズマンションの、間取りの一番広い部屋。
インターホンを押すと、スピーカーからおばさまの声が聞こえ、間もなく扉が開いた。
「沙妃ちゃん、いらっしゃい」
「こんにちは。
今日もお邪魔してすみません」
「こちらこそ、昨日は綾乃がごめんなさいね。
さあ、上がってってちょうだい」
玄関を通され、綾乃の部屋へ向かう。
「昨日から閉じこもって、一度も出てこないのよ。
私が言っても聞かないから、沙妃ちゃんから何とか言ってやってちょうだい」
おばさまは、ドアの向こうへこれ見よがしにため息をついて、リビングへと戻って行った。
おそるおそるノックしてみる。
「綾乃、私だよ」
すると、しばしの間があって、静かに、少しだけドアが開いた。
「……入っていいの?」
返事はない。
「入るからね」
私は遠慮気味に、ドアの隙間へ体を押しこんだ。