今日は何も口にできてない。


当たり前だ。


もう、誰の声も喉を通らない。




休み時間、一人窓際で沈んでいると、メールがきた。


差出人は……圭吾さん。




『今日、時間作ってくれないかな。

無理なら明日でもいい。

話したいことがあるんだ。』




きっと、綾乃のことだろう。


圭吾さんの気持ちを聞けば、綾乃も納得できるかもしれないし、私も安心できるかもしれない。




でも、圭吾さんに会うのが恐かった。


悪夢にとらわれ、混乱して、今の私には一かけらの余裕さえない。


今まで黙って声をいただいてきたことへの自責の念に押しつぶされそう。


でも、会えば私は我慢することができないだろう。


あの魅力的な声を前にしたら、きっと……。




いつもより重く感じる携帯を閉じて、絡み合う気持ちを飲みこむ。


圭吾さんを不安にさせると分かっていても、私はメールを返すことができなかった。