桜の余韻も消えた新緑のキャンパス。
多すぎる人、癖のある教授たち、つまらない講義……
やっぱり、大学生活は苦痛だった。
「もう、つまんなくて死にそう!」
でも、苦痛を感じているのは私だけではなかった。
「せめて作詞の役に立つようにって文学部を選んだのに、毎日古典ばっかり!
私は最先端の現代人なんですけど!」
「綾乃、落ち着いて……」
「落ち着いていられないよ!
本当は一日中だってキーボード弾いてたいのに、こんな不毛な時間、耐えられない……」
「綾乃、泣かないで……」
サポートを任されているバンドで質の高い音楽に触れて、綾乃はますますやる気になっている。
心も体も音楽を求めているのに、徹底的にそれに集中できない環境がストレスらしい。
不安定な綾乃に、私はおろおろするばかり。
「大丈夫、綾乃ならきっとうまくやれるよ」
それは気休めなんかじゃない、偽りない本心。
でも、どんなに励ましても綾乃は机に突っ伏したままで、困ってしまう。
そこへ、先輩と思われる三人組の男の人達がやってきた。
「ねえ、綾乃ちゃん達、今夜辺り俺らと飲みに行かない?」
やたらと明るい髪の色、親しげな話し方。
まるで別世界の生き物みたい。
私は怯えて固まってしまった。