窮屈なスーツからパジャマに着替え、疲れた体をベッドに沈めた。
まだ太陽は傾き始めたばかりで、締め切ったカーテンを透かして日が射しこんでいる。
その明かりにうっすら照らし出された部屋を、うつろに眺めた。
星座表、星座図鑑、望遠鏡……
視界は、星にまつわる物であふれている。
私は、星が好き。
きっかけは、まだ何の悩みもなかった幼い頃、親戚の天文学者のおじさまに天体望遠鏡をのぞかせてもらったこと。
そこから見えた世界は、夢のようで。
以来、私は星のとりこになったのだ。
それから時が過ぎて、自分の体質を嫌悪して誰の励ましにも耳を傾けられなくなったとき。
夜、一人で泣いている私に寄り添ってくれたのは、他の何物でもない、空にまたたく星達だった。
暗くなると現れて、キラキラ浮かんでいる存在。
大きさも違うし、色も違う。
不思議だらけの星を見ていると、声を食べる自分の異質さなんて、ちっぽけに思えた。
私は、星に救われたんだ。
本当は、天文学を学びたかった。
今でも、そう。
でも机の上に積み上げられているのは、文学や語学のテキスト。
私は、唯一体質のことを理解して、いつも助けてくれる綾乃から離れることができなかった。
一人で動き出す勇気がなかったんだ。
「……仕方ないんだよ」
私は言い聞かせるようにつぶやき、強く目を閉じた。