「星、綺麗だね」


空を見上げて、圭吾さんが言った。




「はい、綺麗です」


私も見上げて、言った。




「あの約束、覚えてる?」


そう彼に問いかけられる前から、私は思い出していた。




『いつか、本物の星を見に行こう』




あの日、プラネタリウムでの約束。


それが、こんな素敵な夜に果たされた。


とても嬉しい。


でも、大切にしてきた宝物と今日でさよならしなきゃと思うと、寂しくもある。




「忘れたことなんて、ありませんでした」


名残惜しさをこらえつつ、小さくうなずくと。




「じゃあ、そのまま覚えておいて」


「え……?」


「今日見た星は、カウントしないでおこう」




それから少し間があって。




「二人きりじゃないと、意味ないから」




そして、圭吾さんはつないだ手に優しく力をこめた。