「ありがとうございます」




また、気持ちがこぼれた。




「……どうして?」


圭吾さんは、急に礼を言われて不思議そう。


私も、よく分からない。


だけど、満たされた心が、体が、そう言いたがってるの。




「どうしても、ありがとう、なんです」




まっすぐに目を見つめて言う。


圭吾さんも、まっすぐ私を見てる。


いつもは照れてしまうのに、今日はなぜだろう、恥ずかしさはなくて、ただ心地よさだけがある。




にごりのない、澄み切った瞳に、私が映ってる。




そのとき、確かな意思を持った手が、この右手を握った。




思いがけず、肩が震える。


想いが、伝わってくる。


重なる温もりから、こんなにも、こんなにも。




私も伝えたくて、握り返す。


想いの全部を、ぎゅっ、と握り返す。




優しい時間が、流れ出す。