ライブは五組のベテランアーティストの演奏に三時間が費やされた。
観客達は、満足げに腰を下ろし、お酒をあおっている。
もう若くはないから、みんな少しくたびれてしまった様子。
最後のアーティストの演奏が終わった。
盛大な拍手が沸き起こる。
もう、これでおしまい、という空気。
でも、まだ『Sir.juke』が出てきてない。
そのとき、ステージの脇にマイクを持ったトワさんが現れた。
「みんな、今日は素敵な時間をありがとう!
それじゃあ、これでお開き……と行く前に。
最後に、あと一組、俺のイチオシのバンドを紹介させてほしいんだ」
そして、それぞれの楽器を持った『Sir.juke』のメンバーが、二階から登場した。
メンバーは会釈をしながら客席の間を通り、ステージにスタンバイし始める。
みんな表情が硬い。
綾乃なんて、特に緊張してる。
突然現れた若者達に、観客は「何事か」と静まり返った。
トワさんは、続ける。
「見ての通りこのバンドは若くて、俺らの半分くらいしか生きてないヤツばっかりだ。
でも、こいつらの音楽を聴いて、俺は久しぶりに夢をみせてもらってる。
俺達は、一時でも音楽の世界でがむしゃらに生きた、いわば盟友同士だ。
だからこそ、こいつらの音楽を共有したいと思う」
トワさんがステージに目配せすると、ショウさんは小さくうなずく。
「是非、こいつらの名前を覚えてってくれ!
『Sir.juke』!」
客席から、あたたかい拍手が起こった。