「いいの、いいの。
それより、今からメイクするから沙妃もしてあげるね」
よくない。
そして、しなくていい。
でも綾乃は言い出したら聞かないんだ。
結局、綾乃は服を着ないまま、私は無理矢理顔にいろんなものを塗られた。
「うん、いつも以上に可愛くなった!
これでグロスを塗ったらもっと可愛いんだけどな……」
それだけは、断固拒否。
だってぬらぬらして気持ち悪いんだもん。
「おだてたって、塗らないんだから」
「ふーん。
でも、素の唇のほうがキスするには都合がいいよね」
「きっ……!?」
私は思わず立ち上がった。
何を言ってるの、綾乃は!
「そうか、沙妃はキスを期待してるのね。
分かった、圭吾くんにそう伝えておくわ」
「ちょっと、そんなこと考えてないよ!
絶対に言わないで!」
腕をつかんで妄抗議すると、綾乃は口の端をつり上げた。
「嘘よ」
……からかわれた。
「綾乃!」
「ふふっ、沙妃は子供ね」
綾乃は私の手をひらりすり抜けて、衣装を身にまとい始めた。