汗にまみれた体をシャワーで洗い流し、ベッドでうとうとしていると、綾乃が帰ってきた。
「沙妃、シャワー浴びたの?」
「うん」
「じゃあ、私も浴びさせてもらうわ」
さっきはあんなにはしゃいでたけれど、いくらか落ち着いた様子の綾乃。
ライブへ向けて、気持ちを高めているみたい。
考えてみれば、今日『Sir.juke』はいつもとまったく違う状況でライブをするんだ。
観客はきっと『Sir.juke』を知らない人ばかりのはず。
海の家は密室じゃないから、音の響き方も独特だろうし。
急遽参加することになったから、練習の時間もあんまり取れなくて大変だって、綾乃が言ってた。
大丈夫かな。
今までのライブの体験から、私は『Sir.juke』を信頼してる。
でも環境が変わるって、すごく恐いことだし、不安。
「……って、ちょっと!」
そんな物思いが、一瞬で吹き飛ばされた。
「はあ、さっぱりした」
「さっぱりした、じゃないよ!
その格好……!」
バスルームから出てきた綾乃は、なんと下着しか身に着けていなかったのだ。