ああ、トワさん若い。
私にはふざけたりする気力なんてなくて、駆け回る二人を眺めながら大きなため息をついた。
すると、大盛りかき氷が、突然この手から浮き上がった。
「頑張ってるみたいだね」
大盛りかき氷は、彼の手の中。
スプーンでかきこまれていく氷の、シャリシャリって音が心地いい。
「うん、うまい」
久しぶりの彼の声は、疲れた体に染み渡る。
「……ありがとう」
私は、やっと自然に笑えた。
「あいつ、なんてすばしっこいんだ……」
トワさんが、息も絶え絶えに戻ってきた。
「おう、圭吾。
そんなの食ってライブ前に腹壊すなよ」
「大丈夫です。
それより、いくらですか?」
「金はいらねえよ。
タダでくれてやるから、お前は沙妃ちゃんを民宿まで送ってってやれ」
「え?」
見上げると、トワさんはわしわしと私の頭をなでた。
「今日は手伝ってくれてありがとう。助かったよ」
これで終わっていいんだ。
私は、崩れ落ちそうなほど、ほっとした。