すると、ママはみるみる笑顔になって。
「恋人と海の家……なんてロマンチックなの!」
恋人。
この言葉に綾乃は目を輝かせ、私は頬の温度を上げ、そしてパパはビクッと肩を揺らした。
「ってことは、沙妃はお泊りしていいってことね!?」
「もちろんよ!
沙妃はもう子供じゃなくて、一人の男性から愛される女性なんだもの」
「きゃあ、おばさんってば大胆!」
はしゃぐ綾乃とママ。
「ちょっと、恋人だなんて……」
私は冷めない頬を手で隠しながら、オロオロしているしかない。
「私も若い頃、パパと海に行ったわね……」
「おじさんとおばさんにも、そんな思い出があるんだ」
「もちろんよ。ねえ、パパ」
ママは同意を求めたのに。
パパは厳しい顔をしてリビングを出て行ってしまった。
パパ、怒った……?