でも、パパもママも相変わらずきょとんとしている。
さすがに言葉が足りなかったことに気づいた綾乃は、一つ咳払いをして、みんなに分かるように説明し始めた。
話によると、トワさんはライブハウスの他にもいくつかのお店を経営していて、そのうちの一つに海の家があるのだそうで。
そこではトワさんが顔馴染みのアーティスト達を集めて毎年ライブをしていて、今年は特別に『Sir.juke』も参加させてもらうことになったらしく。
私は、それに招かれた、ということらしい。
そして、夜は海の家の隣の、これまたトワさんが経営している民宿にみんなで泊まるのだそうだ。
海の家なんて、行ったことないし、遠くへ行くのは不安。
でも、海を見ながら圭吾さんの歌を聴くのは、きっと素敵だろうな。
こっそり思いを馳せていると。
「……何となく分かったけど、あの……男の子と一緒なの?」
眉を下げたママが綾乃に尋ねてる。
「大丈夫。目的はライブだから、遊びに行くわけじゃないし。
泊まる場所も男性陣とは離れてて、私と相部屋だし。
何にも心配いらないから!」
「いいえ、そうじゃなくって……」
ママは、ちら、とパパを見やって。
「圭吾くんと、一緒なのよね?」
ママの口から彼の名前が出てきたのが思いがけなかったみたいで、綾乃は途切れとぎれに言った。
「まあ、もちろん、そりゃあ、ウチの看板ですから」