「一度聴いたら忘れられなくて、また何度も聴きたくなって……」




まだ足りない。


気持ちを伝えることが、こんなに難しいなんて。




「歌って、こんなにも力があるんだって、初めて知って、それはきっと、歌ってるのが圭吾さんだからで……」




本当は、もっと、もっと想ってるのに。




「歌ってるときの圭吾さんって、とても自由で、見てると勇気をもらえて、それで……」


「ありがとう」




感謝の言葉にさえぎられて、我に返る。


目の前には、さっきとは別人みたいな穏やかな表情があった。




それからもう一度「ありがとう」と言った圭吾さんは。


「俺には充分すぎるくらいだよ」


と背筋を伸ばし、深呼吸した。




「実は……」