それは、七月の終わりの午後のことだった。
ずっと眠っていた携帯が鳴った。
その特別なメロディに飛びつけば、思いを馳せていた久しぶりの声。
私は急いで支度をして、家を飛び出した。
長い髪の先にまで汗をかきそうな暑さの中を走っていく。
強すぎる陽射しに焼かれて、日焼け止めを塗っていないことを思い出した。
夜になれば、きっとこの弱い肌は真っ赤に腫れ上がってしまうだろう。
でも、そんなのどうだっていい。
息を切らしてやってきた『聖地』で、私はようやくあの人の姿を見つけた。
「ごめん、突然呼び出したりして……」
「そんなこと……全然」
勢いよく首を横に振ると、彼は吹き出した。
「ほっぺた、真っ赤だよ」
頬に手を当ててみると、すごく熱い。
だって、会いたかったんだもの。
だけどそんなこと言えないから、言葉の代わりに、はにかんだ。