「沙妃、やきもち焼いてるんでしょう」
……やきもち?
今度は私がきょとんとしてしまった。
「昨日一人で帰ったのが、寂しかったんでしょ。
それで、不安になって、やきもち焼いたんだ」
確かに、昨日はすごく寂しかった。
一人で帰らなきゃいけなかったことだけが原因ではないけれど。
いろんな事実を一度に突きつけられて、とても、とても不安だった。
「不安にさせてごめんね。
沙妃の気持ちは分かるよ。
ステージに立ってる人間って特別に見えるし、メンバーの間には強い絆があるからね。
でも、あたしも沙妃と同じだよ。
一緒にステージに立ってても、サポートのあたしなんか『Sir.juke』の三人の絆を前にしたらただの他人だから。
それに、もし沙妃が私になったら、圭吾くんとはただの仲間になっちゃうよ。
仲間って大切だけど、でも音楽っていう使命を全うすることが最優先だから、恋愛には向かないと思うんだよね」
近くにいられることがすべてだと思っていたのに。
「沙妃は、沙妃だから、いいんだよ」
私の中で絡まっていた気持ちが、するりとほどけていく。
「沙妃が沙妃だから、圭吾くんは沙妃のことが好きなんだよ」
「す、好きって……!」
「やだ、今更そんなところで照れないでよ!」
二人で頬を赤くしている頃、私の携帯は圭吾さんからのメールを受信していた。
『昨日はライブに来てくれてありがとう。
あの場所で同じ時間を過ごせて嬉しかった。』