「あ、もし良かったらなんだけど…」

少し前を歩いていた難波くんが振り返って、笑顔で言った。


「これからもこうやって会えないかな?」

笑顔は中学の時と変わらず、爽やかでどこか幼くて。きっと高校に行ってもモテたんじゃないかな。

断る理由が見つからない。

だから、やっぱり断れなかった。


「…うん」

「じゃあ連絡先、教えてもらっていい?」


断らない方が残酷なのかもしれない。思わせ振りな態度が、最後に難波くんを傷つける。

自分だって経験してきたはずなのに。希龍くんのことで散々傷ついたはずなのに、同じことを繰り返すの?


「…うん、いいよ…」

分かっているはずなのに断れないのは、きっと自分を守りたいと思ってしまっているから。


「…なぁ川原。」

アドレスを交換している最中。

難波くんはポツリと呟いた。


「…神岡希龍って知ってる?」