「ごちそーさまっっ」


自分の部屋に戻って鞄を持って階段を駆け下りる。


「危ないわよ、翼っ!」
「だいじょーぶだってっ。」


ローファーに足をいれてドアに手をかける。


「いってきまーすっ」
「じゃぁ、お邪魔しました。」


…え?


「また食べにきなさいね、龍夜君。」
「ありがとうございます。」


あたしの横に立つのは間違いなく龍夜で。
あの電話の内容が頭の中で繰り返される。


「ほら、行くぞ。」
「わ…分かってるし!てか、あたしの家だからね、ここっ!!」


どうしたら…いいのかな?
二人で肩を並べながら、学校へ向かう。


「あのさぁ…俺も翼のこと好きだから付き合っちゃわね?」
「ふぇっ!!??」
「ふぇって可愛いな、翼。」


頭を撫でながら、そういって笑った龍夜をガン見する。
こいつ…そういうキャラじゃないだろ。
…それに、この会話…あたしがどうすればいいのかわかんないよ…。


「翼?」
「え?あ、うん?なに?」
「まだ熱があったりする?」


龍夜はあたしの前髪を上げて顔を近づけようとするから、必死に手で抑える。


「だ…大丈夫っっ!!熱下がったし、元気だからっ!!」
「そう?なら、いいんだけど。」
「うん。」


どうしよう…。
龍夜と一緒にいてなに話したらいいのか悩んだことないのに…今、すっごく困ってる…。
いつもは、何も話さないで一緒にいても別に平気なのに、今はなんだか…


「翼。」


怖い…。


「あの、龍夜。あたし、先行くねっっ!」