「むぅ…翼の馬鹿…。」


ぼそりと咲が何かを言ったけど、全然聞き取れなかった。


「何か言った?」
「何でもないもんっっ。やっぱ、あたし和樹と帰るっっ!」
「え、ちょっ!?咲っ!?」


むすっとした顔で咲は教室を出てった。
その後を追いかけようとした。


「ぁっ…。」


急に頭に強烈な痛みを感じて、立っていられなくなった。


「翼ちゃんっ!?」


花恋ちゃんが私のことを呼んでるのに、返事をする余裕なんてなくて、頭を必死に抑えてた。
痛い…痛いよ…。
助けてよ…。


「龍夜ぁ…」


どうしよう…どうしよう。
龍夜に助けを求めてどうするの…?
隠してたのは自分。
熱がこんなに酷いなんて思わなかったんだ。


「翼ちゃんっ!」


花恋ちゃんが泣きそうな顔で私の顔を覗き込んでいるのに、気の利いた一言も言えないぐらい、大好きなんだよ…。
ごめんね、今日は私…おかしいの。
龍夜…。
龍夜。
迎えに来てよぉ…っ。
会いたいよっ…。


「翼っっ!!」
「りゅ…ぅや…。」


ヒーローのように出て来てくれるのは、やっぱり龍夜しかいない。
好きだよ…好きなの…。


「熱があるなら、帰れば良かっただろっ!!なんで、嘘ついたんだよっ!?」


龍夜は、私のことを本気で怒った。
心配してたから、これだけ起怒ってくれる。


「うん…。ごめんなさい…。」
「ったく。」