「なんで、保健室なのぉ⁇」


不満たっぷりなあたしは、保健室の前にきても入るのを渋っていた。


「熱ねぇなら、計ったっていいだろ。ほら。」


腕をぐいっとひかれ、保健室に入る。


「あずっちー。体温計かしてー。」
「いいわよ、そこにあるから使って。」
「あざっす。」


あずっちこと、本居梓【もとおりあずさ】先生。
保健室の先生。


「梓せんせぇっ‼龍夜が虐めてくるぅ‼」
「はいはい。翼ちゃんは、黙って熱を計りなさーい。」
「えー?梓先生まで、そんなこと言うとか酷いっっ‼」


まる椅子に座りながら、こちらを見ようともせず、資料だけを見ながら言った。


「ほら、早くしろよ。もしかして、体温計の使い方わかんないとか?」
「はぁ⁉んなわけあるわけないでしょ‼変態龍夜の痴漢っ‼」


ふざけてる‼
この変態痴漢馬鹿龍夜っ‼


「俺、なんもしてねぇじゃんっ‼」
「馬鹿龍夜ぁぁあっ‼」
「んだとぉっ⁉」


顔を近づけ合いながら睨み合うあたしたちの間にコーヒー片手に梓先生が割り込む。


「はいはい。そこまで。」
「だって、龍夜がっ‼」
「あぁっ⁉翼がわりぃだろ、今のっ‼」
「翼ちゃんは、早く熱計ってね?顔赤いわよ?」
「あっ、ほんとだ。」
「怒ったからよ、馬鹿龍夜のせいで。」
「んのやろっ‼…早く熱計れよ、馬鹿翼野郎。」


龍夜の拳に力が入ったと思いきや、何もせずにそういった。