今が七月の上旬だということは、もうすぐだ。


「あ、あのさ、苺ちゃんは…連れていっちゃダメ?」


 父は眉間に皺をよせ


「何でそんなことを聞く?苺は、オマエの妹だろ」


 と冷たく言った。

 さすがに、離れたくないからだなんて言えない。



「ま、苺ちゃんってすごくしっかりしてるから、一緒の方が心強いなって思って」



 慌てて言うと、父は、「やれやれ」と言いたげな顔をした。



「それじゃあオマエの自立につながらないだろ。もともと、甘えん坊なオマエを自立させるために留学を提案していたんだから」



 これでは、守るという約束も果たすことができなさそうだ。

 龍二は渋々部屋を出る。



 苺が遠距離恋愛でもいいと言ってくれればせめてもの救いだった。

 留学からいつ帰れるかわからない。

 二十年くらい前に、留学先で射殺された高校生みたいな目に遭うかもしれない。


 だけど何より怖いのは、二人の心変わりだ。

 龍二は自分の部屋に入ると、制服を乱暴に脱ぎ捨てた。



 不意に視線に、コンビニの袋が入る。それは、あの雨の日にコンビニで買った物だった。


「…こんなところにあったんだ…」


 龍二は呟き、袋を拾い上げた。

 そのタイミングで、携帯電話が通知音を響かせた。