「大したことじゃないけどね」 クラスの男子の何人かは龍二の裏の人格を知っている。 だが、この家の中で知っているのは苺だけだ。 「そうか。お気楽そうに見えても裏では苦労してるんだな」 父の言葉に、龍二は「まあね」と答えた。 「あぁ、そうだ。ちょうど苺ちゃんが出かけているし、オマエに大事な話があるんだが、いいか」 大事な話。 そう聞いて思いつくことと言えば、一つしかなかった。