「私は、誰も好きじゃないよ」




 苺はそう言って、龍二に背を向けた。



「…苺」



 龍二がゆっくりと苺を呼ぶ。



 だが、苺は龍二を見なかった。否、見ることができなかった。




「…ごめん、龍二くん。私、龍二くんのことも、真澄くんのことも…―――」



 苺はそこまで言って息を吸い込む。



「好きになれないよ」



 その言葉は、遠回しに「嫌いだよ」と告げていた。