「失礼ながら、到着しました」



 運転手の言葉に、苺は龍二の体を振りほどいて起き上がった。



 車のドアを開け、外へ飛び出す。




「…あ!?」




 龍二の怒ったような声が聞こえたが、苺は気にしなかった。



 屋敷へ入ろうとして気付く。




「…鍵、もらってない…」



 そう、養父からも誰からも鍵をもらっていないのだ。