公衆電話か…
最近見かけなくなったよなぁ…

俺は店の外で辺りをキョロキョロと見渡した。

視界に映る範囲では、公衆電話は見当たらない。

中華料理屋の向かい側には、サークルKというコンビニがある…、が…

公衆電話は設置されていない。

一人一台は携帯電話を所有している、という今のご時世では、年々公衆電話が減ってきている傾向にある。

そういえば余り見かけなくなった…

俺は、記憶を頼りに今いる場所の周辺に公衆電話が置いてなかったかを思い返した――、



……


…ある!ここから、500メートル程離れた、セブンイレブンに確か…あった筈だ!

俺は、音速のスピードでそのコンビニへと走った。

こんなに走ったのは、何ヶ月ぶりだろう。

息も切れ切れで、何とかセブンイレブンに辿り着いた。

公衆電話があった事に、取り敢えず安心、

…したのも束の間、

ポケットをまさぐる手は空を切る。

あぁ〜、しまった。
財布も家だ…!!


公衆電話の前で頭を抱えていると、誰かが声を掛けてきた。


「…青葉くん?」


俺を呼ぶ声に振り返ると、そこには職場仲間の大貴の姿が!


「おぉ〜っ!!だぁいきっ!!…いい所にいた!

悪いけど、百円貸してくれない?」


姿を見るなり、百円貸して、何て言う俺に「どうしたん?」と大貴は聞いてきたが、理由も話さず、「頼むよっ!!」と言う切迫した表情を見せる俺に対し、大貴は、


「…何か訳アリなんだ?…じゃあ、俺も野暮なことは聞かないよ。

テレカ貸すから使いなよ、返すのはいつでもいいよ」


と言って大貴は、テレホンカードを俺の手のひらに乗せると、背中を向けたまま手を振り、早々に立ち去った。

色々ツッコミたかったが、今日ばかりは大貴に感謝し、その後ろ姿(去り際の美学)をカッコいいと感じる事にした。

大貴サンキュー。

俺は早速、公衆電話から、自分の携帯へ電話をかけた――。