男だから…なんて、そんな安っぽいプライドを、こんな狭いカラオケボックスの中で発揮してもしょうがない。

…だけど、室内は妙に薄暗く、
いや…薄暗いのは部屋に入るなりミズキが、
「明る過ぎると恥ずかしいよね」
と言いながら、照明を調節したからだけど、

薄暗くても、それはそれで恥ずかしくない?…とは男の俺は言わなかった。



室内には、真ん中にテーブルが置かれ、向かい合うように長椅子の黒いソファーが設置されてある。

俺は、テレビのモニターから一番遠い入り口付近の席に座った。

ミズキはそれを見て、迷う事なく俺の隣りに座った。

ドキリ、…と一瞬情けない音が俺の体からこだました。

何で隣り…?
やっぱり積極的な子?

と思ったけど、
「向かい側に座ると歌ってる顔見られて何か恥ずかしいから」
とミズキはニッコリと言い放った。


隣りは隣りで恥ずかしくないの?…とは俺は言わなかった。


こんな薄暗い狭い空間に男女が二人きりなのに……


どーなるんだ俺…

大丈夫か?
理性は保てるか?


場の空気に流されずに、
ナツへの想いを再確認できるのか…?