「ごめんなさい、遅れちゃって。結構待ったでしょ?」
俺のもとへ駆け寄るやいなや、ミズキは軽く息を切らしながらも悪びれた様子で謝った。
「いや、全然待ってないよ。俺も今来たばかりだから」
笑顔で答えた。
本当は既に30分待ったけどさ。
こういう建て前は常識の範疇…。それより、もし本当に俺が今来たばかりなら、それはそれで問題だ。
ミズキは左手に持っていたショルダーバッグを肩に抱えながら、乱れた髪を直すように触っている。
女の子は外出する時いつもバッグを持っているけど、そのバッグの中には一体何が入ってるんだ…?
そんな俺のつまらない疑問は、ミズキの言葉によってかき消された。
「瞬クン、この前とは何か雰囲気違うね」
ミズキは、さり気なく視線を上下させて、俺の目線で止まると笑いながら言った。
「いや、まぁ…、この前は部屋着だったからな。今日は…
こんなに人で溢れかえる街なかな訳だし」
辺りを見渡しながらも俺は、気合いを入れてる訳じゃないと言うような口調でサラリと返した。
「そうだね」と、ミズキはクスッと笑った。