――…、

時刻は午後7時。
誰もが心踊る開放的な土曜の夜。

街では、カップルがヤケに目につき、俺の視界を曇らせる。

俺はあの後、電話でミズキを誘った。いや、正確にはミズキからの誘いを受けたんだ。一週間、俺が答え待ちにさせてたんだから。

と、しょうもない言い訳に頷きながら、ミズキの到着を待った。


俺が今いるミズキとの待ち合わせ場所は、市内では結構大きな駅の、近くのカラオケボックス。

そこで、ただいま15分ほど待ち中。


女の子を待たせたらいけないなんて世間では言うけど、男を待たすのもダメなんじゃねぇの?


なんて思いも、出不精な俺が久々に見た街の光景は、人で賑わい、

楽しそうに酔っ払っているサラリーマン連中や、目を覆いたくなるような熱々なバカップル、

更には、夏を迎える陽気からか、ストリートミュージシャンがアコースティックで奏でる音楽に、

癒やされ、酔いしれ…和ませた。


動機はどうあれ、
今日は女の子と待ち合わせ。気持ちが高ぶらない方が変だ。



気が付けば、待ち合わせ時間から30分も過ぎた頃、

小走りで近づく、ミズキの姿が視界に入った。


やっと来たか…。
遅えよミズキ!