雨が降っていて、色々な感情が湧いて来たけど


私はそのまま帰った。


そして、病巣を取ってしまったのだから、後は回復に向かっていくだけだろうと、楽観視していた。


雨の匂いは好きだけど、あの時の夏のどんよりした空気は今も忘れられない。


身体は疲れていて少し眠りたかったけど、まったく神経は休まらなかった。


悲しい様な寂しい様な微妙な雨の後の曇天をなんとは無しに眺めていた。


曇天と言えば、一時退院した時に母と衣類の整理をした時のあの空に似ていた。


大山は見えた。丹沢も見えた。だけどこれから先の事は何にも見えない。


私は母のお見舞いに行くのが怖くなっていた。