何分待っただろう。


照明さえ落とされた待合室に


看護師の人が来て、呼び出された。


診察室の前に行くと、ふらふらと母が出て来た。


きっと、診察が辛かったんだろうな、


尿管入れるのが痛かったんだろうな、と


心が張り裂ける思いだった…


「大丈夫?」と聞くと、


「ちゃんとおしっこ取って貰ったから、大丈夫っ」


と、母は『通常通りの自分』に戻ったと


私を宥める様に


笑った。


病院の外へ出た。


夏の匂いがした。


逆光に照らされた母の姿は、


なんとなく嫌な不安を煽った…


そして、


「もうあんまり水モノを飲まない様にしなきゃ」


と、冗談っぽく言った。